生産技術職のやりがいとは?化学業界でのきつさ、魅力、キャリアの実態

化学工場

生産技術職はきついと聞くけど、どういう職種かよく分からない・・・
生産技術職に配属されたけどやりがいが感じられない・・・
このような悩みはありませんか?

この記事では、生産技術職として働いている筆者が、生産技術職の仕事内容と1日のスケジュールについて紹介します。また、生産技術職のやりがいときつさ、キャリア形成と求められるスキルについて解説します。

この記事を読むことで、
・生産技術職の仕事内容が理解できます。
・自分が生産技術職に向いているかどうか判断でき、今後のキャリア形成に役立ちます。

目次

生産技術職とは?

生産技術職

生産技術職の基本的な役割や業務内容について紹介します。

基本的な役割

生産技術職の主な役割は、製造プロセスの最適化と品質向上です。具体的には、製造現場での問題点や課題を特定し、それを解決するための技術的な提案を行います。また、新しい技術や機械の導入を検討し、それに伴う設計変更や生産ラインの改善を行うこともあります。生産技術職は、製造現場との連携が非常に重要であり、実際の製造現場の声を取り入れながら、より効率的で高品質な製造プロセスを実現するための提案を行うことが求められます。

日常業務とその流れ

生産技術職は、基本的に工場内で仕事をすることが多いため、工場内の建屋や工場近辺の事務所にいます。業務課題は、製造プロセスの最適化やトラブル改善、新しい技術の導入であり、事務所でのパソコン作業による資料作りや関係者との打ち合わせ、工場設備や試験機での実験、評価室での評価が日常になります。

一日のスケジュール例

生産技術職の一例を紹介します。午前中にトラブル改善策の有効性確認のための試験や現場確認等を行います。試験は、現場で実施する場合は現場オペレータに依頼することが多く、試験機であれば自ら実施します。午後から、設備設計部隊との打ち合わせや製造部隊との打ち合わせがあり、空き時間で試験報告書の作成等を行います。技術的な検討会が週1や月1で行われることが多く、そのための資料作り等も行います。

これは、あくまで一例であり、試験スケジュールは生産状況に左右されることが多いです。また、工場の生産スケジュールに合わせたり、突発的なトラブル対応があったりと、生産技術職は時期や日によって忙しかったり、暇だったりの差が激しいのも特徴です。

主な業務内容

生産技術職の主な業務内容を紹介します。

設計変更の対応

製品の設計変更が行われる際、それに伴う生産ラインの変更や新しい部品の導入などの対応が必要となります。生産技術職は、これらの変更に対応するための計画を立て、実際の変更作業を指導する役割を担います。

生産ラインの最適化

生産効率を向上させるため、生産ラインの最適化が行われることがあります。これには、生産ラインのレイアウト変更や新しい機械の導入、作業手順の見直し等が含まれます。生産技術職は、これらの最適化の提案や実施を行う役割を持っています。

新設備導入

生産能力増強や収率向上のため、新設備の導入を検討します。会社によって細分化のされ方は異なりますが、必要な設備仕様の明確化や設備設計、設備導入までをすべて行います。

生産技術職のやりがい

やりがい

ここでは、生産技術職の仕事のやりがいについて解説します。

事業に貢献している実感が大きい

生産収率向上や生産効率化により、年間で数百万~数千万円規模の効果を出すことが出来ます。仕事の成果が数字で把握しやすいため、事業への貢献を実感しやすいです。製造現場の最前線での業務が中心となるため、直接的な成果を実感することができます。

実体験としては、昨年実施したテーマではトラブルを解決し、収率を84%→90%に向上させたことにより、年間1億円の効果がありました。

成果が出るのが早い

数か月単位で終了するテーマも多いため、比較的短期間で成果を上げることができます。研究開発等は、数年かけて一つのテーマにじっくり取り組みことが多く、形にならないことも多々ありますが、生産技術職は比較的短期で結果がでる職種です。色々な経験を短期間で積みたい場合は、生産技術職が向いています。

私個人は、3カ月の短期で行うテーマから、3年間の長期的なテーマの両方を担当しています。

関わる知識が広い

生産技術職の業務をこなすためには、電気、機械、化学など幅広い知識が求められます。各専門が集まり、チームで取り組むことが多いですが、仕事を進める中で、自分の専門ではない分野に関して幅広い知識を得ることが出来ます。そのため、興味の幅が広い人や興味の移り変わりが大きい人に向いているといえます。

私は、化学系の技術者ですが、設備導入の際には、電気、機械の専門家とプロジェクトチームを組みます。

生産技術職がきついと言われる理由

ここでは、生産技術職がきつい言われる理由と、それを乗り越えるために重要なことについて解説します。

生産技術職がきつく、辞めたいと思っている方、こちらの記事が参考になります。

長時間の業務

製造現場は、24時間体制での運営が一般的であり、生産技術職は、現場優先で業務を行うため、トラブルが発生した際の対応や、新しい技術の導入など、長時間の業務が求められることがあります。生産技術職は、製造現場の最前線での業務が中心となるため、プレッシャーが大きく、時間的な融通はあまりありません。

このような長時間の業務を乗り越えるためには、可能な限り日常の業務を効率化して仕事を早く終わらせ、ストレスの発散方法などを工夫することが重要です。仕事を早く終わらせる秘訣は、以下の記事で解説しています。

必要な知識の多さ

生産技術職は、製造プロセスの最適化やトラブル改善など、技術的な問題の解決が主な業務となります。これらの問題を解決するためには、深い知識が必要になることが多いです。化学メーカーであれば、化学工学の知識は活用の場面が多いです。その他にも、電気に関する知識や図面を読むなどの設備工学の基礎知識が必要になってきます。

自己研鑽で継続的に技術・知識を学ぶことや、他部署にいる専門家に協力を仰ぐことが必要です。

工場内外での人間関係

工場は、良くも悪くも小さな田舎町のような存在です。悪い噂は瞬時に工場内を駆け巡ります。中には、お局とよばれるようなおばさんに意地悪をされたり、職人気質のおじさんに苦戦したりすることもあります。工場内外での人間関係を良好に保つことは、生産技術職の仕事を進める上で非常に重要な要素です。工場内でおばさんとの人間関係を良くする方法については、以下の記事で解説しています。

化学業界における生産技術職の特徴

化学

ここでは、化学業界での生産技術職の魅力と課題、そして業界特有の特徴について解説します。

化学業界の生産技術職の魅力

化学業界は、日常的な技術の進歩が速いため、最先端の技術や研究に関わることができるのが最大の魅力です。生産技術職としては、新しい製品の製造プロセスの開発や、既存の製造プロセスの最適化など、技術的な挑戦が常に求められます。また、化学業界の製品は、日常生活や産業全体に大きな影響を与えるため、自らの業務が社会に与える影響を実感することができます。

化学業界での課題

一方で、化学業界は、安全性や環境への影響など、多くの規制や要求が存在するため、それに対応する業務が増えることが課題となります。特に、新しい物質や技術の導入に際しては、その安全性や環境への影響を詳細に評価し、適切な対策を講じることが求められます。また、化学業界の製品は、多くの場合、長期的な影響を持つため、将来的なリスクを予測し、それに対する対策を考えることも重要な業務となります。

安全性への取り組み

化学業界での生産技術職は、製品の安全性を最優先する必要があります。新しい製品や技術の導入に際しては、その物質の特性や反応性を詳細に調査し、安全な製造プロセスを確立することが求められます。また、製造現場での事故やトラブルを防ぐための安全対策や教育も、重要な業務となります。

環境への配慮

近年、環境問題が社会的に注目される中、化学業界もその影響を受けています。生産技術職としては、環境への影響を最小限に抑えるための製造プロセスの開発や、廃棄物の処理方法など、環境に配慮した業務が増えてきています。

例えば、最近、フランスが鉱物油由来の包装材と印刷を規制する動きがありました。これに伴い、鉱物油由来の包装材やインクを使っているメーカーが植物由来の原料などへの変更を余儀なくされています。このような設計変更を行うのも生産技術職の一つの業務になります。

キャリア展望と必要なスキル

目指すポイント

ここでは、生産技術職としてのキャリアを成功させるためのステップやポイントについて解説します。

キャリアパス

生産技術職としてのキャリアは多岐にわたります。初めは簡単な設備導入やトラブル改善からスタートし、経験を積むことでプロジェクトのリーダーやマネージャーとしての役割を担うことができます。また、専門的な知識や技術を深めることで、特定の分野のエキスパートとしての道もあります。

生産技術職からのキャリアとしては、例えば、生産管理や品質管理、研究開発など、製造に関連する他の部署への異動や、海外の工場や研究所への異動が考えられます。

また、生産技術職は、事業に関わる大きなプロジェクトを担当することが多いため、プロジェクトマネジメントのスキルやリーダーシップを磨けます。ゆくゆくは、経営層としてのキャリアも視野に入れることができます。

技術的なスキルの習得

生産技術職としての基盤となるのは、技術的なスキルや知識です。新しい技術の導入や製造プロセスの最適化など、具体的な業務を進めるためには、専門的な知識が不可欠です。

自己研鑽

生産技術職は、業務の幅が広く、専門分野以外にも基本的な知識が求められるため、日常的に扱っている技術について学ぶことが求められます。セミナーや研修、論文などで深い知識を習得することで、現場の問題解決に役立てることができます。

筆者の経験としては、問題解決スキルや統計スキルは生産技術職に欠かせないスキルであり、他業種でも活用できるポータブルスキルのため、学んでおいて損のないスキルと思います。

問題解決のスキル

製造現場では、複雑な問題が発生することがあります。これらの問題を効果的に解決するためには、論理的な思考や、異なる視点からのアプローチが求められます。問題解決の思考法は、書籍「イシューから始めよ」が参考になります。また、関連部署の人に相談し、情報を取り入れることで、より良い解決策を導き出すことができる可能性が高まります。

統計学のスキル

生産技術職は、日々製造データや試験データと向き合います。データの意味を正しく解釈するために、統計学のスキルは非常に有用です。また、製造現場の日常的な点検や品質管理には、QC7つ道具など、統計学の考え方が利用されており、生産技術職には必須のスキルとなります。また、統計学は、金融、マーケティング、医学など様々な分野で使われているため、今後どこにいっても役に立つスキルと言えます。

コミュニケーション能力

製造現場は、多くの部署や職種が連携して業務を進めるため、スムーズなコミュニケーションが求められます。生産技術職としては、現場の声や関連部署との連携を強化し、信頼関係を築くことがキャリア形成の鍵となります。

まとめ

生産技術職の仕事内容や日常の業務、やりがいや大変さ、そしてキャリア形成について解説しました。

生産技術職の魅力は、事業への貢献を実感しやすい点や、短期間のサイクルで新しいテーマに挑戦できることにあります。一方で、長時間の業務や必要な知識の多さ、工場内外での人間関係など、多くの課題に直面することもあります。しかし、これらの課題を乗り越えることで、より深いやりがいを感じることができるでしょう。

生産技術職は、技術的なスキルや知識が幅広く習得でき、プロジェクトマネジメントスキルやコミュニケーション能力も鍛えられます。今後のキャリアでは大きな武器になると思います。

この記事が、生産技術職に関心を持つ方や、現在生産技術職として働いている方の参考になれば幸いです。

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